学歴フィルターとは、企業が新卒採用で、大学名によって応募者をふるい分けることです。
説明会の予約が取れない、書類が通らない。その理由が大学名にあるのではないか、という話です。
結論から言うと、線は「MARCH・関関同立まで」に引かれていると言われています。
ネットで出回っている「学歴フィルター42校」を大学群に当てはめると、私立はきれいにそこで切れました。
ただし、企業が「うちは学歴フィルターを使っています」と公表することは、まずありません。
記事では、分かっている数字と、ネットで信じられている線を、大学群ごとに整理します。
学歴フィルターは本当にあるのか
企業は認めません。ただ、近いことを聞いた調査はあります。人事向けの調査機関であるHR総研が、「ターゲット校」を決めて採用しているかを企業に尋ねています。
| 企業の規模 | ターゲット校を決めて採用している割合 |
|---|---|
| 大企業 | 56% |
| 中堅企業 | 51% |
| 中小企業 | 26% |
| 全体 | 39% |
2017年3月の調査で、回答は184社です。
少し古い数字ですが、大企業の半分以上が「力を入れる大学を決めている」と答えています。
ターゲット校を決めることと、それ以外の大学を落とすことは、同じではありません。
ただ、採用にかけられる手間には限りがあります。どこかに力を入れれば、ほかは手薄になります。フィルターという言葉は使わなくても、似たことは起きています。
同じ調査で、大企業がどの層をターゲットにしているかも聞いています(複数回答)。
| ターゲットにしている層 | 大企業での割合 |
|---|---|
| 上位国公立クラス | 67% |
| 旧帝大クラス | 60% |
| 中位国公立クラス | 53% |
| 地方国公立クラス | 53% |
| GMARCH・関関同立クラス | 47% |
| 早慶上智クラス | 33% |
| 日東駒専クラス | 7% |
GMARCH・関関同立が47%で、日東駒専は7%。あいだに40ポイントの段差があります。
「学歴フィルターはMARCHまで」という言い伝えは、この調査の数字とよく合っています。
早慶上智が33%でGMARCHより低いのは、意外に見えます。早慶の学生は、わざわざ狙わなくても向こうから大勢応募してくるからでしょう。ターゲットにする必要がないほど、すでに集まっているわけです。
「学歴フィルター42校」とは
「学歴フィルター42校」は月に1,300回検索されています。学歴フィルターにかからないとされる42の大学を並べたリストで、ネットで長く出回っています。
| 区分 | 校数 | 大学 |
|---|---|---|
| 旧帝大 | 7 | 北海道・東北・東京・名古屋・京都・大阪・九州 |
| 関東の国公立 | 13 | 一橋・筑波・東京工業・東京外国語・お茶の水女子・東京医科歯科・電気通信・東京都立・東京農工・横浜国立・横浜市立・埼玉・千葉 |
| 関西・東海の国公立 | 6 | 大阪府立・大阪市立・神戸・大阪外国語・奈良女子・名古屋市立 |
| 関東の私立 | 12 | 慶應義塾・早稲田・上智・学習院・明治・東京理科・青山学院・中央・立教・芝浦工業・法政・国際基督教(ICU) |
| 関西の私立 | 4 | 関西・関西学院・立命館・同志社 |
誰が、何をもとに作ったのかは、はっきりしません。企業が出したものでも、調査機関が出したものでもありません。それでも就職活動の時期になるたびに、本物の基準のように引用されています。
このリストには、もう存在しない大学が入っています。大阪外国語大学は2007年に大阪大学と統合しました。大阪府立大学と大阪市立大学は2022年に大阪公立大学になり、東京工業大学と東京医科歯科大学は2024年に東京科学大学になりました。
今の大学で数え直すと、42校は39校です。3校ぶんは、名前だけがフィルターを通過し続けています。20年近く前になくなった大学が入ったままのリストを、今年の就活生が調べている。学歴の話は、たいてい情報が古いまま回っています。
42校を偏差値や就職率で検証した記事が、学歴フィルター42校とは?(学歴フィルター.com)にあります。
大学群で見ると、線はどこに引かれているか
42校を、このサイトで扱っている大学群に当てはめました。
| 大学群 | 42校に入っている数 | 入っていない大学 |
|---|---|---|
| 旧帝大 | 7校中7 | — |
| 早慶上理 | 4校中4 | — |
| MARCH(GMARCH) | 6校中6 | — |
| 関関同立 | 4校中4 | — |
| TOCKY | 5校中5 | — |
| 電農名繊 | 4校中2 | 名古屋工業・京都工芸繊維 |
| 四工大 | 4校中1 | 東京都市・東京電機・工学院 |
| 金岡千広 | 4校中1 | 金沢・岡山・広島 |
| 5S | 5校中1 | 信州・静岡・滋賀・新潟 |
| 成成明学獨國武 | 6校中0 | 全校 |
| 日東駒専 | 4校中0 | 全校 |
| 産近甲龍 | 4校中0 | 全校 |
| 女子大御三家 | 3校中0 | 全校 |
私立は、分かりやすく切れています。早慶上理、MARCH、関関同立は全校が入り、成成明学獨國武から下は1校も入っていません。
成成明学獨國武は、偏差値では日東駒専より上とされる大学群です。それでも42校では、日東駒専と同じ「ゼロ」です。MARCHのすぐ下にいても、線の向こう側であることに変わりはありません。
偏差値表では1段の差が、このリストでは「入っているか、いないか」の差になっています。
国立のほうは、偏差値より場所で決まっているように見えます。金岡千広のうち、入っているのは千葉だけ。5Sで入っているのは埼玉だけ。どちらも東京の隣です。広島、岡山、金沢は入っていません。
埼玉大学が入って広島大学が入らないリストを、全国共通の基準と呼ぶのは無理があります。これは、東京の就職活動から見えた景色を並べたものです。作った人のいた場所が、そのまま線になっています。
芝浦工業大学だけ、なぜか入っている
私立の12校を見ると、早慶上理とGMARCHとICUのほかに、1校だけ毛色の違う大学があります。四工大の芝浦工業大学です。四工大のほかの3校は入っていません。
学歴フィルター42校って芝浦工業大学の卒業生が作ったものですか?
広島大学や岡山大学、金沢大学、国際教養大学がないのに芝浦が入っているのは違和感があります。
広島や岡山や金沢がないのに芝浦が入っているのは違和感がある、という質問です。疑いたくなる気持ちは分かります。
作った人が誰かは分かりません。ただ、こういう疑いが出ること自体が、このリストの性質をよく表しています。
出どころが分からないので、「誰かが自分の大学を入れたのでは」と言われても、反論できる人がいません。
四工大については四工大とはに、電農名繊は電農名繊とはにまとめています。
日東駒専は、学歴フィルターにかかるのか
学歴フィルター42校に日東駒専や産近甲龍が入っていないのはなぜですか?
これらの大学はよくネタにはされていますが、その割には決して簡単に入れるという訳ではないと思います。実際それらの大学って、中学時代の成績がかなり良かった人たちが多い印象を持ってます。
学歴フィルターを使うような大きな企業は、世の中の僅かなエリートしか求めていないということなんですか?
ネタにされるわりに、簡単に入れる大学ではないのに、という内容です。
42校には、日東駒専も産近甲龍も1校も入っていません。HR総研の調査でも、日東駒専クラスをターゲットにしている大企業は7%でした。数字とリストの両方が、日東駒専は線の外側だと言っています。
ただし、これは「大企業が力を入れて採りに行く相手ではない」という意味です。
「応募しても必ず落とされる」という意味ではありません。日東駒専から大企業に入る人は毎年います。入口で優遇されないだけで、扉に鍵がかかっているわけではありません。
日東駒専の人がいちばん損をしているのは、フィルターそのものより、「どうせフィルターで落ちる」と思って応募しないことかもしれません。フィルターは、企業の中より先に、学生の頭の中で働きます。
理系は、線の引かれ方が違う
「学歴フィルター 理系」もよく検索されています。理系は、文系と事情が違うと言われます。
理系の採用では、大学名より、学科や研究室が見られることが多くなります。機械なら機械、化学なら化学の学生がほしいので、大学名だけでは絞れません。研究室と企業のつながりで決まる就職もあります。
そのため、42校に入っていない名古屋工業大学や京都工芸繊維大学、四工大の残り3校が、理系の就職で不利だという話はあまり聞きません。42校は、文系の就職活動を念頭に置いたリストと考えたほうがよさそうです。
学歴フィルターのある企業は、どこか
検索されている言葉を見ると、「学歴フィルター」の後ろに会社の名前を付けたものが何十個も並んでいます。鉄道、銀行、メーカー、コンサル。志望する会社にフィルターがあるのかを、1社ずつ調べているわけです。
答えは、どこにも載っていません。企業は公表しないからです。載っていないので、また検索されます。
言えるのは、一般的な傾向だけです。応募が何万人も集まる人気企業ほど、全員の書類を読むことができません。
何かで絞る必要があり、大学名はいちばん手間のかからない絞り方です。逆に、応募が少ない企業には、絞る理由がありません。フィルターがあるかどうかは、企業の方針というより、応募の数で決まります。
学歴フィルターは、大学群があるから成り立つ
最後に、このサイトらしい話をします。
「学歴フィルターはMARCHまで」という言い方は、MARCHという言葉がなければできません。日本には大学が約800あります。その中から何十校かを選ぶとき、1校ずつ名前を挙げていたのでは、人に伝えられません。「MARCH以上」「日東駒専まで」と言えるから、線が引けます。
大学群は、もともと受験生が志望校を整理するための呼び名でした。それが4年後、就職活動の線引きにそのまま使われています。18歳のときに覚えた語呂合わせが、22歳のときに自分を分ける線になる。
大学群という発明の、いちばん実用的で、いちばん残酷な使い道です。
私は京都大学の出身なので、このフィルターで困ったことはありません。だからこそ言えるのですが、線のこちら側にいる人は、線があることをほとんど意識しません。学歴フィルターを毎月8,000回検索しているのは、線の近くにいる人たちです。
まとめ
- 学歴フィルターとは、採用で大学名によって応募者をふるい分けること。企業はまず公表しない
- HR総研の調査(2017年)では、大企業の56%がターゲット校を決めて採用している
- ターゲットにしている層は、GMARCH・関関同立が47%、日東駒専が7%
- 「学歴フィルター42校」は出どころ不明のリスト。今の大学で数えると39校
- 42校を大学群に当てはめると、私立はMARCH・関関同立まで。成成明学獨國武から下は0校
学歴フィルターの線は、「MARCH・関関同立まで」と言われています。調査の数字も、ネットのリストも、だいたい同じ場所を指していました。ただし、どちらも企業が認めた線ではありません。誰も認めていない線を、全員が知っている。学歴フィルターは、そういう形で存在しています。
大学群の全体の並びは大学群の序列に、呼び名の一覧は大学群一覧にまとめています。
出典
- ターゲット校採用の割合: HR総研「2018年新卒採用動向調査 結果報告」(2017年3月調査、184社)
- 学歴フィルター42校の一覧: 学歴フィルター.com「学歴フィルター42校とは?」

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