この本で著者が言いたいことは、
「思い込みをなくそうぜ」
「自分の知識が限られていることを認めようぜ」
「知らないことは知りませんという勇気を持とうぜ」
「新しい事実を知ったら喜んで意見を変えようぜ」
ということです。
データが大切ということはもちろんなのですが、それに加えて「謙虚に考え方を変える柔軟性」が大事だなと思わせてくれる本です。
こんにちは。nerio(@neriopapa)です。
いきなりですが問題です。
世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A: 20%
B: 50%
C: 80%
この問題の答えを考えてみてください。
(いきなり正解と解説を見たい方はこちらへどうぞ)
この本では、人間がいかに「思い込み」によって間違った思考をしてしまうかが書かれています。
そして、その思い込みを排除するためにはデータを正しく活用することが重要だと説きます。
著者はどんな人?
著者のハンス・ロスリングさんはスウェーデン出身の医者であり学者さんでもあります。
TEDでいくつか講演しているのですが、これを見るとだいたいどんな人かわかります。
この動画、20分ほどあるのですが夢中で見てしまいました。
人間が持つ「ドラマチックすぎる世界の見方をする」10個の本能とは
人間はその進化の過程で、「生き延びるために瞬時に判断する本能」を身に付けています。
そして、瞬時に判断する必要があるがゆえに「人間はドラマチックすぎる世界の見方をしてしまう本能がある」と筆者は述べています。
この本では、その本能を10個に分類しています。
1. 分断本能
「世界は分断されている」という思い込み
2. ネガティブ本能
「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
3. 直線本能
「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
4. 恐怖本能
危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み
5. 過大視本能
「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
6. パターン化本能
「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
7. 宿命本能
「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
8. 単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
9. 犯人捜し本能
「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
10. 焦り本能
「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
本書ではこれら10個の本能一つ一つに対して解説を加え、いかに人間があやふやな情報を元に行動しているかを示します。
例えば、
「世界には極度の貧困層もいれば億万長者もいる」という情報が伝わりやすいのに対して、「世界の大半は、少しずつだが良い暮らしをし始めている」という情報は伝わりにくい傾向があります。
これは人間の「ドラマチックな本能」のせいで、何事も2つのグループに分けて考えたがる「分断本能」や、貧困層が変わらず存在するという「ネガティブ本能」、一部のニュースだけを信じて判断してしまう「パターン化本能」などによるものです。
実際は世界の人々の暮らしは全体的に向上しているにも関わらず、正しい見方ができない例です。
世界が少しずつ良くなっていることを学ぶことが大事
冒頭に紹介した問題に戻りましょう。
世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A: 20%
B: 50%
C: 80%
正解は、「C: 80%」です。
ちなみに私は間違えました。
深く考えずに50%くらいかな?と思ってしまったためです。
筆者によると、この問題の平均正答率は13%とのこと。
また、日本に限ると正答率はわずか6%でした。少なっ。
チンパンジーに答えさせたとしても正解率は33%なので、この本の中では人間はチンパンジー以下とされています。
ちなみに答えを考える間、頭に何を思い浮かべました?
私は、アフリカのサバンナで痩せた子供が井戸で汚れた水をくんでいる姿でした。
この本によると実際はそんなことなくて、アフリカ各国でも交通インフラや医療はかなり発達しており、ワクチンを冷蔵した状態で各地の病院に運べるようになってきているという事実があります。
これは恥ずかしいですね。。
自分の頭がかつてのアフリカのイメージのまま、何年もアップデートされていないことに気付きました。
この問題を間違えた人はこのような思い込みにとらわれています。
- ネガティブ本能
→アフリカの医療は発達していない、という思い込み - 分断本能
→欧米や日本とアフリカの格差はすごく大きいという思い込み
- 宿命本能
→アフリカは先進国に追いつけない、という思い込み - パターン化本能
→アフリカの断片的なイメージがアフリカ全体に広がっているという思い込み
しっかり新しい情報で頭をアップデートしていかないといけないことを痛感しました。
謙虚であることも大事
「データが大切」ということを強調しているこの本なのですが、私が驚いたのは著者のロスリングさんが非常に謙虚だということです。
人間が持つ10個のドラマチックな本能に対して、ロスリングさんは自分で気付き、データを分析したうえで自分の考え方を改めています。
これって結構すごいことだと思うんですよね。
人間、特に年を取ってくると考え方が保守的になってきて、なかなか考え方を変えるのは大変になってきます。
正しいのはデータ、間違っているのは自分の考え方、と割り切って自分を変えることの難しさと重要さを教えてくれました。
まとめ
この本の著者であるハンス・ロスリングさんは執筆途中にガンで亡くなっており、共同執筆者である息子さん夫婦が最後まで書き上げて出版に至っています。
そのせいかどうかわかりませんが、随所に著者の執念のようなものも感じます。
また、訳者の1人である上杉周作さんがこの本の脚注を書いているのですが、そのボリュームがすごい。
本の中に出てくるデータの元ネタについてこれでもかというくらい解説をしてくれています。
こちらも執念のようなものを感じてしまいました。
本書を読んでから脚注も合わせて読むとおすすめ(かなり時間かかりますが)。
定価1,980円の本ですが、充分過ぎるほどに元が取れた本です。
それでは、nerio(@neriopapa)でした。