こんにちは。株主優待大好きnerio(@neriopapa)です。
今回はJT (2914)の株価について解説します。
JT、言わずと知れた「日本たばこ産業」ですね。
このJT株ですが、私は保有していません。
当ブログでは基本的に私が保有する優待銘柄について紹介しているのですが、投資においては「なぜこの銘柄には投資しないのか?」という考えも非常に大切です。
私がJT株に対して考えていること、高配当&優待銘柄であるにも関わらず投資しない理由について述べていきます。
なお、当記事はJT株に投資されている方の考え方を否定するものではありません。投資に対するスタンスは人それぞれですし、最終的には自分の信念に沿ってやるものなので。
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JTの株価が下落しています
JTの20年チャート。

2016年あたりをピークに、右肩下がりで落ちてますね。
2019年時点で、最高値の半分近くまで落ちています。これは2008〜2009年のリーマンショック以来の下げ率です。
これを見て、
「いやいや下げ過ぎでしょ。買い!」
という人と
「まだ下がるでしょ。買えない!」
という人がいます。
twitterでは株価が3,000円くらいだった頃から同じような議論がされていたのですが、あれよあれよという間に2,500円を切るまで下がってしまいました。
さて、ここが株価の底なのか、それともまだ下がるのか?
株価下落の原因は?
JTの株価がここまで落ちてきた理由は下記6つあると考えています。
1. 国内喫煙者の減少
日本国内でたばこを吸う人はどんどん減っています。
それに伴い、国内における紙巻きたばこの販売数量も年間で10%くらいずつ減っています。
たばこの価格は定期的に値上げされますが、それを加味しても補えないレベルで国内売上は減っています。
しかも痛いのが、
「将来的に国内の紙巻きたばこ売上が増加に転じる可能性がほぼゼロ」
という点。
株価は将来を写す鏡とも言われますが、将来性が無い会社の株価が上がるはずもなく、(国内に限って言えば)株価の将来は暗いと言わざるを得ません。
2. プルームテックが超出遅れ
日本国内では「電子タバコ」が良く売れています。
しかしその約7割はフィリップモリス社が販売する「アイコス」であり、JTが力を入れる「プルーム・テック」はかなり出遅れています。
従来のプルーム・テックの弱点であった「吸いごたえの弱さ」をアイコスに近づけるため、新製品を投入していますが、既存のアイコスユーザーを引き剥がす程の力があるようには思えません。
個人的には紙巻きたばこの減少を補い、国内のたばこ売上をプラスに転じさせるまでのインパクトは残せないのではないかと考えています。
3. 外国人投資家が逃げている
近年、世界の投資業界で大きな流れとなっているのがESG投資です。
ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に配慮している企業に対して積極的に投資しようぜという考え方です。
たばこ事業を展開するJTは、このうちSocial(社会)に配慮していないとみなされ、外国の機関投資家がどんどんJTの株を売りまくっているのです。
<JTの外国人株主比率の推移>
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
外国法人 | 33.6% | 32.1% | 30.9% | 27.4% | 20.0% |
この通り、2014年には株主全体の1/3を占めていた外国人投資家の割合が2018年には1/5に減少しています。
この傾向は今後も続くとみられ、株価の減少につながる要因の一つとなっています。
またESGの観点で言うと、JTのウェブサイトにある社長のメッセージ。
気付きましたか?
「たばこ」という文言が一切無いんですよ。
これだけ読んでも、何の会社だかわからないですよね。
恐らくESGを考慮して、JTはできるだけたばこのイメージを消そうとしているのだと思うのですが、自社の主力商品を推せないというのはかなり可哀相な気がします。
4. 配当性向高過ぎ問題
そもそも配当性向とは、
「企業が出した利益のうち、どのくらいを配当金に回すのか」
という割合を示したものです。
日本における上場企業の平均は「約30%」。
例えば利益が100億円だったとすると、そのうち30億円を配当金として株主に還元している、ということになります。
で、JTの配当性向がどれくらいかというと、
69.7%
です(2018年度)。
<会社ウェブサイトより抜粋>
JTの配当性向は既にめちゃくちゃ高いんです。しかもここ5年間ずっと上昇しています。
だからあんなに配当利回りが高いんですね。
現在JTに投資している人がなぜ投資しているかというと、一番大きな理由は
「配当金が多いから」
でしょう。
では、もし業績が悪くなってきて、高すぎる配当性向を下げるべく配当金を減額したらどうなるか??
配当金を目当てにしていた投資家が逃げていくのは目に見えていますよね。
こういったリスクを投資家は敏感に感じており、そのことが株価が上昇しない一因になっているのだと思います。
5. 海外M&Aによる「のれん」の減損リスク
恐らく投資家が最も気にしている点はここではないでしょうか。
JTの財務諸表を見ると、のれん代が約2兆円もあることがわかります。

JTの総資産の約4割を占めるほどの大きな額です。
「のれん」とは、企業をM&Aにより買収した際に生じる会計上の項目です。
企業を純資産以上の高い金額で買った場合、純資産よりも「払い過ぎた分」をのれんとして計上しないといけないのです。
例えば純資産100億円の企業を1,000億円で買えば、1,000億円 – 100億円 = 900億円が「のれん」として計上されます。
この「のれん」ですが、M&Aで買収した企業の業績が安定していれば特に気にする必要はありません。
ところが、もしこれらの企業の業績が悪くなってきた場合、その差額を損失として計上しないといけなくなるのです。
ここでJTのM&Aの歴史を見てみましょう。
最近で言うと、2017〜2018年にJTが買収した海外のたばこ会社は以下の通りです。
年 | 会社名(国名) | 買収金額 |
---|---|---|
2017 | マイティー・コープ(フィリピン) | 約1,100億円 |
2017 | カリヤディビア・マハディカ(インドネシア) スーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラ(インドネシア) |
約1,100億円 |
2017 | ナショナル・タバコ・エンタープライズ(エチオピア) | 約490億円 |
2018 | ドンスコイ・タバック(ロシア) | 約1,900億円 |
2018 | アキジグループ(バングラデシュ) | 約1,645億円 |
すごい勢いでM&Aを進めていることがわかります。
例えば2018年に買収したバングラデシュのアキジグループですが、売上高が208億円、営業利益は62億円でした。
純資産も大した額ではないはずで、この会社を1,645億円で買収したということは、かなりの「のれん」が計上されているのです。
全ての国で日本と同じようにたばこの価格をすぐに上げられるわけではないはずです。
嫌煙ブームが各国に広がってきた時に、のれんを一気に減損して多額の損失を出すのではないか…?というリスクを投資家は感じているため、JT株から逃げているのです。
6. 海外M&Aはいつまで続けられるのかという懸念
海外のたばこ会社をガンガン買収しまくっているJTですが、いつまで続けられるのでしょうか?
イギリスのユーロモニターインターナショナルという会社の調査によると、「世界のたばこ販売数量の8割が上位5社で占められている」とのことです。

ということは、JTが買収しやすい中小のたばこ会社は、残りの2割しかないということです。
現在は新興国のたばこ会社を中心にM&Aを進めているJTですが、あと数年で限界が来るのではないか?と私は見ています。
とはいえ直近の業績は堅調
いろいろJTについてネガティブな話ばっかりしてきましたが、足元の業績は堅調なんですよね。
営業利益はここ5年間ほぼ横ばいです。
<会社ウェブサイトより抜粋>
日本国内でたばこが売れなくなっているので誤解しがちなのですが、実はJTは現時点ではかなりの優良企業なのです。
しかも配当金が高いし、株主優待もあるし。
言うことなしですよね(笑)
まとめ
今回JTについて記事を書くにあたり色々調べたのですが、本当にJTって面白い会社です。
ポジティブな意見とネガティブな意見がここまで対立する会社って珍しいのではないでしょうか。
肝心のJTの株価の見通しについてですが、私はもうしばらく下げるのではないか?と見ています。

チャートを見る通り、まだ下降トレンドが続いていますよね。
著名投資家であるcisさんの言葉を借りれば、
「上がり続けるものは上がり、下がり続けるものは下がる」
ということだと思います。
上で述べたような6つの株価下落の理由が解消され、株価が上昇し、その上昇トレンドが1年くらい続くようであれば投資してもよいかなと思います。
それまでは利回りが高くとも我慢します。
<〜以下ご案内〜>
私は妻口座・子供口座ともにSBI証券で取引をしています。SBIの特徴は下記記事にまとめましたので興味を持たれた方はよろしければご覧ください。

ネット証券会社はたくさんありますが、
で良いと思います。
ではまた!
(※)投資はくれぐれも自己責任でお願いします。